こんにちは、Latis Globalです。前回は、ゲームのウェブサイトは一般的な商品やサービスを紹介するサイトと比べどのような違いや特徴があるのかについてお話しました。
また、ゲームのウェブサイトを翻訳する際にはどういった点に注意すべきかについても述べさせていただきました。今回は引き続き、ゲームのウェブサイトをローカライズする際の注意点についてお話していきたいと思います。
ゲームのウェブサイトのローカライズにおける注意点
[Part 1]
1) 原文の文脈を正しく把握する
2) ゲームの雰囲気に合った単語や表現、口調を用いる
3) 原文に含まれる特定のニュアンスや意味を活かす
[Part 2]
4) ゲーム関連の用語・略語・ミームなどの情報を把握する
ある程度人気のあるタイトルであれば、固有の用語や略語、特徴的な表現やミームなどが必ずと言っていいほどユーザーの間で拡散・共有されています。そういった情報を踏まえず、単に辞書的な意味を基準に訳すと原文に込められた遊び心や含意が失われ、没個性な訳文になりかねません。
ゲームのウェブサイトにはゲームに関連する言葉遊びも頻繁に登場するため、関連知識もさることながら原文の意図に沿ったセンスのある訳文を書ける能力が問われます。幸いゲーム関連情報の多くはインターネット検索によって得られるため、仮に知識がなくても情報力で疑問点を解決しクオリティを高めることができます。
5) ゲーム内の用語や表現との一貫性を保つ
ゲーム内で用いられる様々な用語と訳文との一貫性を保つのも大事なポイントです。スクリーンショットに表示されている文字と説明文の用語が食い違っていると、ユーザーの理解を妨げる原因になるばかりか、そのサイト自体の信頼性を下げることにも繋がります。たとえば、ゲーム内では「ストア」と呼ぶのに対し「今すぐゲーム内のショップを確認しよう」といった表現をしたり、キャラクターの名前が実際には「シャーロット」なのにウェブサイト上では「シャルロット」となっている場合、単体では深刻な問題ではないにしろ、細心の注意を払った翻訳とは言い難いでしょう。
また別のケースだと、新シーズンが始まった当時は未翻訳だったクエスト名の翻訳アップデートが正しく行われず、ゲーム内のクエスト名とウェブサイト上のクエスト名が別々の言語で表示されるといった事例もあります。特にクエスト名はその性質上、ユーモアのセンスを活かして原文とはかけ離れた意訳をする場合が多く、このような食い違いはユーザーに対し余計混乱を与えてしまいます。
6) 様々な要素を考慮して口調を使い分ける
口調は基本的に統一するものですが、時にはいくつかの口調を使い分ける必要もあります。ゲーム紹介の部分ではゲームの雰囲気に合わせてくだけた言葉遣いをしていても、アップデートなどのお知らせや大会情報などの文章は格式張った口調が相応しいことがあります。敬語が単語レベルで明確に定まらない言語に翻訳する場合でも、丁寧で格式張った表現とくだけた表現はほとんどの言語で区別されるため、時と場合に合わせて適切に使い分けるのが望ましいです。
外国語のウェブサイトを日本語に翻訳するときも、すべての文章を同じ口調で訳すこともできますが、ここでも性質によって適切に使い分けたほうが自然な場合も多くあります。たとえば、本文は全体的に「ですます調」で訳しても、画像の説明文の部分は……
「ゲームショーの参加者たちが……体験スペースに集まっている」
「実際のプレイ画面。面白おかしく表現されたプレイヤーのキャラクターが表示されている」
このように「だである調」を使うのがしっくり来るでしょう。
また、翻訳によって語順が変わる場合、原文が狙っていた効果が薄れることも多々あります。たとえば、原文が次のように意図的に3行に分けられていて、DOWNLOADにリンクが張ってある場合、
DOWNLOAD
FOR FREE
NOW!
翻訳後は語順が入れ替わり……
今すぐ
無料で
ダウンロード!
このように並ぶかもしれません。この場合、訳文でリンクが3行目に来るのは大丈夫なのか、「ダウンロード」の単語が原文通り1行目に来なければならない技術上・レイアウト上の理由があったりはしないかを確認しなければなりません。
時には翻訳後にも原文と同じ語順や配置などを維持するのが事実上不可能なこともあります。その場合はクライアントに詳細を報告し対策を促すか、問題点を回避する方法を提案するのが良いでしょう。ローカライズ時に発生するこのようなトラブルに積極的に対応し、代案を提示することができれば、クライアントに対しても誠実で専門性のある印象を与えることができます。
いかがでしたか? 気にすることや準備することが多くてややこしく感じたでしょうか?
ゲームの知識も必要で、関連する表現やミームも調べて、テキストに単純な文字通りの意味を超えて込められた配置上の意図も確かめて、単語をゲーム内用語と一々照らし合わせて……口で言うほど簡単な仕事ではありません。しかし、クライアントがウェブサイトを翻訳することで期待している効果が何なのか、内容にはどんな意図があるのか、特に注意すべき点は何かなどに焦点を合わせて作業すれば、ほとんどの間違いはなくすことができるでしょう。想像や推測で作業を進めるのは禁物です。肝要なのは、ローカライズ作業中にクライアントと緊密にコミュニケーションし、クライアントの意向をできるだけ早く把握することです。
以上でウェブサイトをローカライズする作業の特徴や考慮すべき点、注意点などについてお伝えしました。細かく入りすぎると文章が長くなるため省略した部分もあり、説明が足りない部分があったかもしれません。後に機会があれば、一部の内容を詳細に扱う記事を書いてみようと思います。
来月にはさらに面白い内容をお伝えできれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。