ここ数年間、ゲーム産業はめまぐるしい変化を遂げ、単なる娯楽から様々な産業に影響を与える総合エンターテインメントへと進化してきました。こうした変化の中心には、世界市場への展開に重要な役割を担うローカライズがあります。現在は、多くの開発会社が特定の国の文化に合わせたローカライズで海外市場に参入し、様々な国のユーザーがゲームを楽しめるための取り組みを進めています。
今回は海外進出するゲームのローカライズサービスを提供しているLatis Globalを通して、長年ビッグマーケットとされている日本市場に参入したグローバルゲームのローカライズについて詳しく説明します。
日本のゲーム市場を狙ったグローバルゲームのローカライズ事例
日本はビデオゲーム黎明期からゲーム産業を主導してきました。任天堂、ソニー、セガなど、世界のゲーム市場を代表するゲーム会社が日本で誕生しています。日本のゲーム市場は世界において高いシェアを占めており、幅広い開発・革新の歴史と熱狂的なファンに支えられ進化と成長を繰り返す、ダイナミックで活気あふれる市場です。
それでは、ローカライズによって日本のユーザーの間で人気を博したタイトルを紹介します。
Grand Theft Auto (GTA)
Rockstar Gamesは、日本市場展開に向けてGrand Theft Auto(以下、GTA)をローカライズする際、日本のユーザーがGTAに興味を持つようにゲームを大幅に変更しました。例えば、日本人の感性に合わないような一部の暴力シーンは削除・編集し、JPOPヒット曲が流れる新しいラジオ番組を含む日本語音声解説を追加しました。Rockstar Gamesはこのようにして、英語に不慣れな日本のユーザーがGTAに没入できるよう工夫しました。
ゲームの文化的要素もそうですが、GTAのローカライズにおける最大の困難は言語の壁でした。この問題を解決するためにRockstar Gamesは日本語翻訳チームを作り、ゲームのスクリプトや字幕、その他テキストの翻訳作業を進めました。さらに日本文化コンサルタントの協力を得て、ゲーム内の俗語やジョークを日本のユーザーが理解しやすいように修正しました。また、ゲームの操作方法も日本のゲーマーの好みに合わせて変更しました。こうした取り組みの結果、GTAは没入感の高いゲームプレイと日本文化の反映を実現し、日本のユーザーの支持を得ることができたのです。
Minecraft
Minecraftは、スウェーデンのデベロッパー『Mojang Studios』がリリースしたサンドボックスゲームです。日本では2012年、Xbox 360で初めてリリースされ、その後様々なプラットフォームに展開されました。Minecraftの日本語ローカライズには、テキストの翻訳だけでなく、グラフィックやゲームプレイを日本市場に合わせて修正する作業も含まれていました。
Minecraftの日本語ローカライズで注目すべき点は、日本のユーザーのために新たなチュートリアルモードを実装したことです。このモードでは日本語で話すキャラクターが登場し、プレイヤーを案内しながらゲームのメカニズムを詳しく説明してくれます。
また、ローカライズにおいては日本の伝統建築や文化、芸術に対する考え方や好みの違いを考慮して作業が進められました。その結果、桜や伝統様式の扉、日本の地図など、日本文化を反映した様々な要素をゲームに取り入れることができました。
これらによって、Minecraftは日本で幅広いファン層を獲得し、高い売上を記録しました。2021年現在、Minecraftは日本で最もヒットしたビデオゲームの一つであり、Nintendo Switchだけで220万枚以上の売上をあげています。
Call of Duty
Call of Dutyは、開発段階から日本市場展開を目指してローカライズされた1人称視点のシューティングゲームシリーズです。日本語のUIや字幕、音声に対応するのはもちろんのこと、『Call of Duty: World at War』の日本語版からは広島と長崎への原爆投下に関して触れている部分が削除されています。このゲームの日本パブリッシャーであるスクウェア・エニックスは、このような内容が日本のユーザーに対して不適切だと判断し、ゲームから除外したことを発表しました。
日本のゲーム市場に参入する場合の注意点
1. 文化的センシティビティ
日本は自国のゲームに対し高い誇りを持っており、日本のゲーマーの間には独特な文化と社会的規範が形成されています。そのため、彼らに共感されないような文化的要素やキャラクター、ストーリーラインには注意する必要があります。
2. 言語のローカライズ
言語のローカライズは、日本のユーザーに没入感の高いゲーム体験を提供するために大変重要な作業です。Minecraft日本語版の場合、ゲームのインターフェースやあらゆるテキスト要素(メニュー、アイテム、セリフ、ゲーム内のメッセージに至るまで)を日本語にローカライズしました。また、チュートリアルも日本の言語や文化に合わせて翻訳・修正することで、日本のユーザーにプレイ方法をよりわかりやすく案内することができました。
3. 規定の遵守
ローカライズに関する日本の規定や要件を理解し遵守するのは、日本市場参入に成功するために大変重要な要素です。例えば、ソニーのPlayStationでリリースするゲームは、例外なく日本におけるゲームソフト倫理審査機構である『CERO』の審査を受けなければなりません
最後に
ローカライズは、自社のゲームをより多くのユーザーに認知させ、ゲームの成功可能性を最大化したいデベロッパーにとって非常に重要な要素です。ローカライズにはテキストの翻訳だけでなく、ターゲットとなる顧客の文化的・社会的特徴に合わせてゲームを修正する作業も含まれます。したがって、それぞれの市場の文化やゲームプレイに対する好みなどを理解する必要があります。
Latis Globalは海外市場展開を目指す皆様に、ローカライズとコンサルティング、ゲーム運営、ゲームQAなどの専門的なサービスを提供します。詳細については、contact@latisglobal.comまでお問い合わせください。